製本工芸展 |
美しい作品に圧倒される。羽田野さんの作品の凄さは、装丁する作品への理解の深さだ。美しいデザインにとどまらず、構成は書誌学的に貫かれている。
それにしても、支持帯をむき出しにしたような、細いステンレス棒の背には魅入られてしまった。
白い丸背の部分に金属が使われて、中世の塔のような趣を呈していたのも面白かった。
ギャラリー最寄りの品川駅周辺が変貌していたのにはたまげた。最近はよくこのような事態に遭遇する。同じような駅ビル、同じような珈琲ショップ、同じようなパン屋、、、。
古書店は整然と清潔で、神田の古書店とは大分趣が異なり店主の好みを多分に反映しているようだったので一巡りしてみた。目に入った倉橋由美子「シュンポシオン」を見て懐かしくなった。倉橋邸のお茶室に見立てた小間でごちそうになったアップルティーの香りと倉橋さんの顔の白さを思い出して、つい棚から下ろしてしまった。
「これ、いくらでしょうか?」と訊いてみた。サイン本でもあり、状態が大変にきれいだったので、いきなり購入の意思を示さない方がよいかと思ったのだ。
「えーと」と、本をめくりためつすがめつして店主は言った。「1,500円でどうでしょう?」
へえ、値付けってそんな具合にするのかと、おかしかった。今、机の上に本がある。
都合でどうしても最終日になってしまったが、多くの方にご紹介したい個展だった。