作家の仕事 P-2 |
ギャラリーで会う。
先日来、作家の仕事について認める機会があったが、今日もその時のエピソード。
女性の作家。
在京だが、すこし遠方。外出時にはある「セット」を携帯するのだという。
針と毛糸がポシェットからでてきた。車中での手仕事用なのだという。
実演して見せてくれた。
針は危険のないように、右手の掌の中にすっぽりと納めて、予め穴を開けた素材に次々に通していく。
それを見ていて不覚にも目頭が熱くなった。
時間がもったいなくて、電車の中でそうした仕事をするのだという。そればかりではなさそうだ。
いとおしそうに、毛糸は素材に巻かれていく。作品づくりに寄せる想いそのままだ。
出来上がったボタンは裏側までもが美しい。
手に入れたいと思う瞬間である。
手作り作品というのは希少価値ももちろんのことだが、作り手の身を削るような仕草がふと感じられた時に何ともいとおしく、そばにいて欲しいと思うようになる。いてくれることがホッとする。
しかし!ボタンはボタンの用をなさなければならないことも言うまでもない。
二つながらを満たした瞬間、手作り作品はこの上なく、限りなく身近なものになる。
それが使ってみたくなるということだろうと思う。
作家のそうした努力を無にしてはならない。